動線を考えてみる~空間の動きをコントロール

2023.09.06
空間づくりの上でサインやディスプレイを活用して行うこととして、
お客様の動線をコントロールするということもあります。

目的によりどのような行動をとればいいかということ。
それが明確にわかる空間というのは、お客様にとって快適な空間といえるでしょう。
今回はその「動線」という視点を少し深堀してみましょう。


■ヒトの動きのしくみを理解しよう
わたしたちヒトの90%は右利きです。
その場合軸足となる脚は左脚となり、何かを取るときは右半身で正対して右側から取ることが優先されます。
このメカニズムに沿ったものとして、駅の改札口やジュースの自動販売機のコイン投入口はすべて右側にあります。
同じ商品があった場合、7:3の割合で右側の商品が取られるといったデータもあります。

動線においても同じメカニズムが働き、野球のダイヤモンドや陸上のトラックに代表されるように軸足の左を中心とした回転方向である「半時計周り」が右優位の動線となります。データ実証として、右周りよりも左回りの半時計周りの方が400m走で平均2秒以上早くなるそうです。
ただし、実際の店舗や事務所においては他の要素で右回りの方が効率が良い場合もありますのであくまで「どちらかといえば」くらいのニュアンスで。
ムリに左周りにすることによって効率が悪くなると本末転倒です。

コーナーに着目すると。
空間の構造としては通常は四角い形をしていると思います。
つまりは動線としては直角にちかい「角」が存在することとなります。
そのような角をヒトは直角にターンしません。最短距離を歩こうと丸く回ろうとします。
なので陳列などにおいてはL時コーナーなどの角の商品は視認性が悪く、サインなどの設置に関しても、コーナー部においては少し遠い位置からの視認性を考える必要があります。

このような現象はヒトの体のメカニズムによるところで、その影響は自然によるもの。それを踏まえて、動線を誘導することは空間づくりに活きてきます。


■サイン・ディスプレイによる誘導
店舗や事務所への誘導関して、まずは基本的な誘導のステップとして、エントランスの認知をしてもらうことが動線の確保の一歩目です。
オープンカフェや公共スペースからの誘導も増えてきて、まず入り口がどこか分からない店舗も増えてきました。これが優位に働く空間もありますが、きちんと動線を確保してお客様を誘導するという観点においては、入口をコントロールして、情報や人材を配置することが必要です。
メニュースタンドやメッセージスタンドあたりは設置するだけである程度そこが入口にあるといったイメージが与えられますね。

もうひとつサイン・ディスプレイに関してですが、ヒトはカニ歩きしないということも意識したいところ。
メインのヒトの流れをコントロールしたい方向に対しては、ナナメに振ることでお客様に対しても効果的に情報を見ていただけます。
逆にあえて止まって滞留してもらいたい場所は少しでっぱりを作って壁をつくり、その場所に情報をまっすぐ掲示することでお客様にゆっくり情報を見てくださいといったメッセージを送ることができます。

POPなどの配列にしても、動線の優位性を意識すると目立たせる箇所が分かりやすくなります。
スーパーマーケットやコンビニなどでは什器の短手の部分。
ゴンドラエンドの部分ですが、買い物動線においては角の部分にもあたり、そのまま素通りしてしまう可能性が非常に高い場所です。そこであえてここに目立つ商品やセール品などを置くことを「マグネット」といいます。磁石のように吸い寄せるって意味です。
一般的に買い物動線としては什器やゴンドラのスタートとゴールに対して購買頻度が上がるということが実証されてます。
なので動線の長さや商品の配列が単調の時は、途中のポイントに注意喚起を持っていけばリズムがつきます。スタートとゴールを意図的に増やすということです。

全体の動線を考えた上で、サインやディスプレイを配置していくこと。

ヒトが自然に動くメカニズムに関しては、今後増えていくであろう高齢者はより顕著にその傾向が強くなります。
ただ闇雲に案内をするということよりもお客様にとって優しい空間になるのは言うまでもありませんね。

一覧へ戻る